2025年8月16日土曜日

とんチキのエロゲソング100選(2025年版)

 前回(2024/12/15)の百選の後も好きな曲は見つかり続けました。
 最近,霜月はるかさんの曲をバーッと聴いていたら,これまでは「色々聴いたけど個人的に好きなのは『瑠璃の鳥』と『Universalia』だけだなあ」なんて思っていたのに「Distance」と「風の理」というすごく好きになれる歌が新たに見つかってしまいました。そのことと,近頃エロゲソング好きのフォロワーも増えましたし,改めて100曲まとめ直すには良い頃合いだと思って作りました。

以下,100選。
「曲名/歌手名」にリンクがついているものはYouTubeにある公式のFull音源に飛びます。

1.Distance/霜月はるか(Innocent GreyPP -ピアニッシモ- 操リ人形ノ輪舞』)

 いま存在しなくなると1番困る曲のため1位。サビが優しくて好き。

2.アクアプリズム/Rita (AXLDolphin Divers)

 100選を作るにあたり聴き直して唯一泣きそうになった。Ritaさんの優しい歌声が好きなので,知る限りその最たるものです。

3.return to that place/川田まみ(etude『そして明日の世界より――)

 先月からゲームを読んでいる最中で,最後に聴くことになるであろう曲のため,結末を見届けてどんな気持ちで聴くのだろうと日々想像しては鳥肌を立てていた。

4.シナリオ/reset(Littlewitch『白詰草話 -Episode of the Clovers-)<前回2位

 苦しい日々を送っていても丸ごと肯定してくれる,応援歌みたいな曲。「抱きしめ離『さ』ずに歩いて行く」の「さ」に思いが乗っていて好き。

5.同じ空の下で/KOTOKO(D.O.『家族計画』)前回10位

 10秒でわかる魅力的なイントロ。そして,手拍子のリズムがおしゃれすぎて真似できない。


6.Message in a Bottle/Rita(Terios『りこりす -lycoris radiata-)前回12位

 軽快でかっこいい曲。一方で歌詞も相まってかRitaさんの声がかわいい。

7.神様のりんご/WHITE-LIPS(light『どんちゃんがきゅ〜』)前回18位

 サビに入るところでガラッと雰囲気が変わるのがおしゃれ。歌詞もかわいい。

8.a little christmas time/fripSide(Whirlpool『メリ☆クリ ~10年ぶりのホワイトクリスマス~』)

 原曲はreset。元からこのカバー好きだったけど,100選にあたってエロゲに使われていることに初めて気づいて入選。

9.philosophy/MOMO(D.O.『家族計画』)前回7位

 切なくも晴れやかな気持ちになれる曲。カラオケでギリギリ自分で歌えるのも好き。

10.Dream The ally of/rino(CIRCUSD.C.〜ダ・カーポ〜』) 

 ラスサビの終盤「守りたい」から,ここにきて新しい展開を見せて終わるの好き。


11.Universalia/Barbarian On The Groove feat. 霜月はるか(あっぷりけ --『アルテミスブルー』)前回13位

 シモツキンの綺麗なを堪能できる曲。一段音が上がるラスサビが熱い。

12.ディアノイア/riya(CIRCUS『最終試験くじら』)前回8位

 定番曲だけど実際めちゃくちゃ綺麗な曲。初めて聞いた時にはエロゲにはこういう曲があるんだって感動した。

13.Force Deadly Sin/Barbarian On The Groove feat. カヒーナ(スタジオメビウス『SIN 黒朱鷺色の少女』)前回76位

 コーラスが霜月はるかさんらしい。贅沢すぎない?軽みがありながら熱い曲で好き。

14.Mighty Heart~ある日のケンカ、いつもの恋心~/KOTOKO(きゃんでぃそふと『つよきす』)※リンク先はセルフリメイク版

 各サビの「だめ」の言い方とか,「やけに仲良くない?」で最後だけセリフっぽくなるところとか,KOTOKOさんの声かわいいポイントが多すぎる。

15.蝉時雨/みとせのりこ(NOA『蝉時雨』)前回4位

 サビのちょっと幅のある高音が心に迫ってきて好き。


16.雪の羽 時の風/Barbarian On The Groove Feat.茶太(あかべぇそふとつぅ『G線上の魔王』)前回1位

 2番のサビから入り始めるコーラスがめちゃ好き。ラスサビの終わりに向かって色んな楽器入って盛り上がっていくのも好き。

17.For our days/川田まみ(etude『そして明日の世界より――)前回3位

 初めて聴いたとき,なんて綺麗な歌なんだと思った。それからいつ聴いても期待を裏切らず綺麗。

18.水平線まで何マイル?/茶太(ABHAR『水平線まで何マイル? -Deep Blue Sky & Pure White Wings-)

 静かなところから始まって,全体を通して盛り上がって豪華になっていく感じが好き。

19.NO WAY/真理絵(TinkerBell『淫妖蟲〜凌触学園退魔録〜』)前回28位

 かっこいい曲だけど真理絵さんの歌声になんかホッとするのが好き。

20.FOOTPRINTS IN THE SAND/monet(枕『H2O -FOOTPRINTS IN THE SAND-) 前回37位

 後にも言葉が続くとはいえ,2番のサビで何気ない感じで「I love you」って言うところ好き。一瞬音が消えて,そこからラスサビに入るのが好き。


21.TIME/片霧烈火(銀時計『こいとれ ~REN-AI TRAINING~』)

22.夕焼けのマージナル/Riryka(だんでらいおん『たいせつなきみのために、ぼくにできるいちばんのこと』)前回14位

23.DROWNING/MOMO(ANIM『凌辱痴漢地獄』)

24.Precious Wing/茶太(PULLTOP『この大空に、翼をひろげて』)

25.桜霞~サクラノカスミ~/西沢はぐみ(Silver Bullet『桜吹雪 〜千年の恋をしました〜』)前16位


26.瑠璃の鳥/霜月はるか(Innocent Grey『殻ノ少女』)前回88位

27.Love Me Love La Bride!! /青葉りんご(チュアブルソフト『ラブらブライド』)

28.陽だまりコイゴコロ/片霧烈火(HERMIT『世界でいちばんNGな恋』)前回87位

29.ナグルファルの船上にて/monet(ケロQ『素晴らしき日々 ~不連続存在~』)前回6位

30.Imaginary affair/KOTOKO(F&CFC01『こなたよりかなたまで』)前回60位


31.ロケット☆ライド/Duca(チュアブルソフト『あの晴れわたる空より高く』)前回39位

32.誓いの言葉/WHITE-LIPS(lightR.U.R.U.R ル・ル・ル・ル このこのために、せめてきれいな星空を』)前回32位

33.夏草の線路/KOTOKO TO AKI(EMURailway ~ここにある夢~』)

34.こいびと☆アクセント!!/fripSide NAO project!(Sirius『こいびとどうしですることぜんぶ』)前回5位

35.風の理/霜月はるか(RaM5 -ファイブ-)


36.Leaf Ticket/KOTOKO(戯画『パルフェ 〜ショコラ second brew〜』)前回58位

37.H2O/monet(枕『H2O -FOOTPRINTS IN THE SAND-)前回19位

38.Especially/橋本みゆき(CIRCUSD.C.II 〜ダ・カーポII〜』)前回22位

39.Imitation/榊原ゆい(lightImitation Lover)前回33位

40.マブラヴ/栗林みな実(âge『マブラヴ』)


41.cover link/島みやえい子(Selen『連鎖病棟』)

42.(a)SLOW STAR/Swinging Popsicle(ニトロプラス『スマガ』)前回34位

43.アンダーハンデッド・ガール/YURIA(キャラメルBOX『処女はお姉さまに恋してる~2人のエルダー』)

44.希望のウタ/青葉りんご(TAIL WINDTrample on “Schatten!!” 〜かげふみのうた〜』)前回26位

45.真実の翼-サダメノツバサ-/Barbarian On The Groove feat. カヒーナ(WORKS『僕がサダメ 君には翼を。』)前回51位


46.Perfect Loop/Swinging Popsicle(ニトロプラス『スマガスペシャル』)

47.さくらとことり/はな(枕『向日葵の教会と長い夏休み』)前回11位

48.Vanille Rouge/ave;new Feat.佐倉紗織(戯画『フォセット』)前回41位

49./真里歌(WORKS『るいは智を呼ぶ』)前回59位

50.CROSSING/Marica(FlyingShineCROSS†CHANNEL)前回20位


51.カスミカゲロウ/Rita(raiL-soft『霞外籠逗留記』)

52.Moving go on -そこから見える未来-/川村ゆみ(Lass3days 〜満ちてゆく刻の彼方で〜』)前回21位

53.奇跡の絆/榊原ゆい(キャラメルBOX『めぐり、ひとひら。』)前回25位

54.style/YURIA(BasiL『それは舞い散る桜のように』)

55.コンフェティ/eufonius(etude『秋空に舞うコンフェティ』)前回15位


56.宝物/Riryka(WORKS『るいは智を呼ぶ』)前回65位

57.桜色の想い/Duca(ensemble『桜舞う乙女のロンド』)前回30位

58.永遠のアセリア/川村ゆみ(ザウス(本醸造)『永遠のアセリア』)前回27位

59.後ろ髪の証跡/美月琴音(Purple software『ハピメア』)前回29位

60.Dreht sich!/宮沢ゆあな(Liar soft『ぼーん・ふりーくす!)前回48位


61.Sledgehammer Romance/KOTOKO(130cm『プリンセスブライド』)

62.櫻ノ詩/はな(枕『サクラノ詩』)

63.Mirage Lullaby/YURIA(NavelSHUFFLE!)

64.Allegretto~そらときみ~/KOTOKO(戯画『この青空に約束を)前回54位

65.クローバー/Duca(CUBEyour diary)前回82位


66.夜明けのベルが鳴る/安田みずほ(feng『彼女のセイイキ』)前回40位

67.空気力学少女と少年の詩/はな(ケロQ『素晴らしき日々 ~不連続存在~』)前回46位

68.君が望む永遠/rino(âge『君が望む永遠』)

69.ヴァルハラ/Rita(SkyFish『鋼炎のソレイユ』)

70.Face of Fact/KOTOKO(戯画『BALDR FORCE)


71.melty snow/川田まみ(bootUP!『あねいも2 Second Stage〜』)前回96位

72.Triptych/真理絵(ALcotTriptych)前回97位

73.プチタミ/茶太(AXL『キミの声がきこえる』)

74.Graceful Anomaly/ave;new Feat.佐倉紗織(Lump of SugarMagical Charming!)前回83位

75.happy blue sky trip/いとうかなこ(ニトロプラス『スマガ』)


76.Alea jacta est!/Rita(Tarte『カタハネ』)前回57位

77.Tears to Tiara/中山愛梨沙(LeafTears to Tiara)前回44位

78.二つめの空/UR@N(RusKAster)前回55位

79.キンカクジ/いとうかなこ(ニトロプラス『アザナエル』)

80.Try on!/NANA(PULLTOP『てとてトライオン!)前回80位


81.Clover Heart's/真理絵(ALcotClover Heart's)前回91位

82.Shining Orange/榊原ゆい(ハイクオソフト『よつのは』)前回62位

83.もしも明日が晴れならば/WHITE-LIPS (ぱれっと『もしも明日が晴れならば』)

84.月夜に舞う恋の花/ういにゃす(AUGUST『千の刃濤、桃花染の皇姫』)

85.なつのおくりもの/中恵光城(すみっこソフト『なつくもゆるる』)


86.クローバー/みとせのりこ(MeteorClover Point)前回68位

87.そらの隙間/片霧烈火(あかべぇそふとつぅ『車輪の国、向日葵の少女』)前回9位

88.青い記憶/いとうかなこ(ニトロプラス『"Hello, world.")前回90位

89.Destiny/橋本みゆき(Purple software『あると』)前回42位

90.見えない明日へ/真里歌(WORKS『るいは智を呼ぶファンディスク -明日のむこうに視える風-)前回74位


91.Rumbling Hearts/栗林みな実(âge『君が望む永遠』)前回45位

92.ランピン’/中原涼(LittlewitchQuartett!)前回24位

93.WHITE ALBUM/森川由綺(LeafWHITE ALBUM)前回23位

94.closest love/fripSide(Lapis lazuliAreas 恋する乙女の3H)前回93位

95.心はいつもあなたのそばに/津田朱里(LeafWHITE ALBUM2)


96.桜の花が咲くまえに/栗林みな実(âge『マブラヴ サプリメント』)前回31位

97.風のRhythm/ゆうか(PULLTOP『遥かに仰ぎ、麗しの』)前回43位

98.扉ひらいて、ふたり未来へ/miZuho(AUGUSTFORTUNE ARTERIAL)

99.ココロルート/榊原ゆい(PULLTOP『ココロ@ファンクション!)前回36位

100.深青Philosophy/ Veil ∞ Yui Yamamoto (AUGUST『夜明け前より瑠璃色な-Moonlight Cradle-)

2025年7月21日月曜日

第6回美少女争奪戦 自作の振り返り

第6回美少女争奪戦 自作の振り返り

 第6回美少女争奪戦の美少女ゲームヒロインレビュー大会に参加しました。
 自分の作品について振り返ります。

1.ヒロイン選び

 スマガは今年(2025年)の4月頭~5月頭に読みました。その少し前くらいから,そろそろ今年レビューするヒロインを選んでおかないとな…と感じていました。ちょうどその頃,スマガの直前に読んでいた作品からヒロインの候補を挙げていました。

鍵アカウントでの発言

 『WHITE ALBUM2』の中川ちゃんです。年明け5日目~4月頭まで『WHITE ALBUM2』を楽しんでいました。おそらく3月頃に残したと思われる中川ちゃんレビューの草案には「ダブルっぱいバーグエッチにアシガピンソースを添えて敗北したい」とあります。

 その後改めて誰を選ぶのか本格的に考え始めたのは6月頃だと思いますが昨年のレビューに引き続き,また今年も穂村有里ちゃんでレビューをする案もありました。ただしその場合は,同じ『恋楯 Re:boot』ではなくオリジナルの『恋する乙女と守護の楯』の有里ちゃん(演:如月 葵)で書くつもりでした。当時メインで進めるゲームの合間にちょこちょこ読んで癒されていました。声優さんも異なっており,また違う魅力を見せてくれた有里ちゃんに二度目の恋をしていました。なんかまろやかでこれも良いんだよ。

なんてかわいいんだ
 昨年のレビュー。

 昨年のレビューは初参加だったこともあり,周りを無視させてもらって1対1で伝えるような感じで,この場を借りて有里ちゃんに伝えたいことを伝えるぞ!くらいの気持ちで書きました。この作品で去年参加させていただいたことは満足しているのですが,今年は読んでいて面白い,もっと楽しませるレビューを書きたいという熱意がふつふつと湧いてきました。

 楽しませ方として,ふざけた文章を書きたいと思いました。中川ちゃんのレビュー案は先述のメモからあまり発想が広がらなかったように思います。また,有里ちゃんは今読んでいる1周目では攻略できないヒロインで,『恋楯』好きだから1周目だって大切にも読みたいしレビューを書ける状態になるまで時間かかっちゃうなと思いました。一方でその頃には読み終えていた『スマガ』から,ミラちゃんにふざけた文章との相性の良さを見出したように思います。とっても元気で明るくて,ある程度見た目通り幼くて,喋り方もその場のノリ次第という感じでちょっと独特。曲がったことは大嫌い。正義の味方。

2.方針決め

 初めの頃に思いついたレビューの案は最終的にはシリアスな内容でした。『スマガ』は主人公がより良い結末を求めて,死んではその少し前にループをすることを繰り返します。何度やっても敵に世界を滅ぼされてしまう,世界が救われても誰かが命を落としてしまうというような中で,諦めるのか諦めないのかを幾度も問われます。

 冒頭にひとしきりミラちゃんに甘えるギャグパートがあるのは同じなのですが,実は辛い戦いから逃げようと眠ったふりをしたり,ミラちゃんに甘えてみたりしている。匂いで嘘がわかるミラちゃんは無理をしてそれを許している。正義を愛するミラちゃんを自分の弱さに付き合わせて苦しめることに耐えられなくなって正気を取り戻し,たとえ勝算は無くとも真っ直ぐな気持ちで一緒に戦いに戻っていくという感じでした。

 笑わせるのには影を感じさせる背景は余計かなと感じ,今回はむしろそのギャグテイストを広げて全編に亘って明るい面白さを追求しようと方針を変えました。

3.レビュー概説

 まずは全体の流れを。初め,幼児退行してミラちゃんのお腹に抱き着いて甘えていたが,ミラちゃんの小さな胸が目に入ると自分が過去に立てた誓いを思い出して正気を取り戻す。お互いに正義の味方として守るべき大切なもの(安眠,そしてぺたんこ)がある。一緒に箒で飛び立とうとするが,勢いが凄すぎてミラちゃんだけで飛んで行ってしまう。これらの状況が読み取れていない人がいたらそれは…きっと僕のせいです。

 重要かもしれないので膝枕について動向を追います。文章の始まる前からミラちゃんに膝枕はされていて,目を覚ました俺はその状態からミラちゃんに向き直って無我夢中でお腹に抱き付き始めて発したのが最初の「バブゥーっ!」。思ったよりも状況に適応してママをやってくれているミラちゃんに感心してママのお顔を見ようとお腹から顔を上げると目に入るのがぺたんこ。そこで何かを思い出して正気を取り戻すときの「なんで膝枕?」は「(そういえば)なんで膝枕(されていたんだ)?」ということですね,元々は前後あったんだけど削りまくっていて申し訳ない。この時には俺は普通に立ち上がって呻いていると思う。ミラちゃんが俺に膝枕をさせていた理由が「安眠を守ります!」なのは,ミラちゃんは一緒にいた俺が枕もなく眠ってしまったのを,俺の安眠を守るために膝枕しましたということです。つまり俺が頼んで膝枕をしてもらったのではなく,これはミラちゃんの自主的膝枕で…って,えーい!

 これくらいですかね膝枕は。

 説明がなく,次々と場面転換していくというような旨のコメントを頂きました。それもそのはずで,レビューを作る際に「説明をするだけで面白味に貢献できていない部分はなるべく削ぎ落とそう」と腐心していました。「笑いには緩急だ」と思い,激しさと落ち着きを交互に繰り出そうとしました。ミラちゃんの元気いっぱい,はちゃめちゃっぷりを表現できたかな…

4.一番書きたかったもの

 一番書きたかった部分は3行目の,ミラちゃんが「あ,あまえんぼさんだ…」と言っているところですね。突然激しく赤ちゃんになってしまった俺を,緊急性と俺への優しさからなんとか受け入れようとミラちゃんはやったこともないママをがんばってくれています。ママかわいいよ…

 男性が自分より幼い女性に母性を求めてしまうというのは一つのパターンで,実際にそういう願望や嗜好は真剣にありますし,それでいてそのいびつさは笑える描写にも調理できそうだなと感じて採用しました。しかし本編でミラちゃんがママっぽい振る舞いをする場面が特段ないかなとも思ったので,ミラちゃんは普段ママをやりたい願望があるわけでもママになるのが得意なわけでもないと推測しました。そのため「ママになってほしい」というのは通常ミラちゃんにできることを越えている要求だと思います。だからこそ土壇場でぎこちなくもママをがんばろうとしているミラちゃんが見たかった。

 何かを必要とされる状況が先にあって,なんとかそこに追い付こうとがんばる姿って好きです。
3人の魔女(エトワール)。左からスピカ,ミラ,ガーネット。

 『スマガ』の世界は,ミラちゃん含めてたった3人の魔女(エトワール)が,周期的に空から墜ちてくる怪物ゾディアックから町を守っている世界です。基本的に3人のコンビネーションが無いとゾディアックを倒すことは困難です。そんな中で他二人(スピカとガーネット)が険悪になってしまった時はミラちゃんが仲を取り持つ場面がありました。普段は一番幼いけど,この時はむしろミラちゃんが一番大人だなと感心した覚えがあります。ミラちゃんは正義の味方だから,本当に必要なときには背伸びしてでもがんばってくれるんだと思います。だからママも本当に必要なときはやってくれます。

 解説をいただいた通り,彼女は相手のもみあげの匂いを嗅ぐことで嘘がわかる特殊な能力を持っています。おふざけ半分で中途半端な幼児退行をしたところでバレてしまい,「なにをしてるのさ」ときっとかわされます。だけど本気で赤ちゃんになれば,ミラちゃんは戸惑いながらも慣れないママをがんばってくれると想像できました。賭けに勝ちました。

5.その後の内容の解説

 レビュー冒頭に書きたいものを書いたその後の内容を順に追っていきます。
 上まで戻ってレビュー見るの大変だと思うのでもう一回でっかく貼りました。

 女性のおなかやおへそが好きです。すでにギャグパートにはミラちゃんの胸に甘えるのではなくお腹やおへそに執着するくだりはありました。そこで真っ先に胸に行かなかったことを面白く活かせないかと思い,ぺたんこのパートが生まれました。

 「栄光のぺたんこ」はミラちゃんが自身の小さな胸に愛着を持っていることに僕が感激したことと,字面は劇中に何度も登場する「栄光の手(ハンド・オブ・グローリー)」が元ネタです。そのため「栄光のぺたんこ」と書いて「チェスト・オブ・グローリー」と読んでもらおうと思いましたが,去年は有った備考欄が無くなっておりそれは諦めました。そういう種々の指示に一つ一つ細やかに対応するのは大きな負担だったでしょうから無くなってしまったのはしょうがないと思います。今こそ叫べ!チェスト…オブ…グローリーッ!!

 ミラちゃんが安眠を守る,という話を「—栄光のぺたんこは,これを永久に—」と「—俺も守り抜く…!」で挟んでいます。すなわち,ミラちゃんが俺の安眠を守ってくれたその代わりに「俺」はミラちゃんのぺたんこを守ることを決意しています。正義の味方として。

 「—栄光のぺたんこは,これを永久に—」は日本国憲法に見られる「○○は,これを△△する」の形を意識しており,「栄光のぺたんこは,これを永久に保護する」が本来の姿です。途中で切ることで,赤ちゃんとして狂う中でミラちゃんの胸が目に映った途端,脳裏にフッと蘇った感じを出そうとしました。

 条文は途中で切ってその続きの内容は同じ「―」で繋いだ「—俺も守り抜く…!」というセリフの形で見せることで,外に形としてあるルールや目標であり,なおかつ今もう一度確めた「俺」の内側から発する理想や意志でもあることを表したかった。

 ぺたんこを見て何かが頭をよぎった後,突然苦しみだしたり「なんで…!」と口にしている部分は,狂ってしまったり精神を操られたりしていたキャラクターが何かのきっかけで大切な約束とかを思い出して正気に戻るというようなよくある展開のパロディです。周囲と触れてきたコンテンツが違うのか特定の作品のパロディとかだと勢いで笑えるものの元ネタがわからないこともあって,自分がやるときには特定の作品を知らなくても伝わりやすそうな不特定のパロディにしようと思ってました。

 最後に二人はどこかへ箒で飛び立とうとするのですが,劇中でもミラちゃんの箒の後ろに乗るともの凄い勢いに振り回されて大変な目に遭います。その箒が描く軌道はとっても直線的。ミラちゃんらしいですね。「どっこい」はミラちゃんを象徴する掛け声なので絶対どこかに入れたかった。一緒に戦いに赴くエンドだったころは一緒に夜空を駆ける金色の槍になったりしていましたが,全体がギャグテイストになったので落っこちました。ミラちゃんのうっかりしたところやパワフルさを表現したかった。

 画像はいくつか候補がありましたが,1回ちょっと隠してぱっと開けたときに「かわいい~♡」ってなったからこれにしました。

6.大会当日

 場面転換を多用したことや,最後の締め方について「爽やか」というような感想を頂けて意外に思いました。エッッッッ性のパワーを上げるために使ったのが下ネタでないことに言及頂きましたが,「爽やか」と言っていただけたのはそれも良かったのかなと感じました。まあ自分は女の子のお腹が好き,おへそが好きなので最初の2行は作者的には結構劣情ポイントだったんですが…。でも,明るく元気なミラちゃんの魅力を邪魔しないように心がけていたので,確かにパワーのためにえぐい下ネタとかに向かうのは実際避けていましたね。

 バラさんにエッッッッ性賞候補に選んでいただきました。去年とは違って勝つつもりで来ていたので,でも無理かな…とも思いながら最後にノミネートされたときは凄く嬉しかったです。昨年出場したとき「めろさんにも解説してもらいてぇ」と思っていたので,ノミネートされておさらいが発生したことで夢が叶いました。アンケートでもおそらく2名の方にご投票いただいたと思います。悔しさよりもここまで自分を押し上げてくれたことに感謝でした。目指していた全員の1番にはなることはできませんでしたが,僕に1番をくれた方が確かにいるのが嬉しかったです。

 完全に余談ですが『ローゼンメイデン』で7人姉妹の次女として生まれ,ずっと「2番」という数字に縛られていた金糸雀が,自分に1番をくれるみっちゃんに出会えたことで不幸ではなくなった話を思い出します。俺は泣きそうだけどまじで余談だな。

7.『スマガ』おもしろいよ!

 好きな作品なので,もちろん『スマガ』も宣伝したくてミラちゃんを選んだところもあります。あらすじは―目を覚ますと自分は空を落ちていて,一切の記憶を失っていた。そこはドームに覆われた大都市で,周期的に空から怪物が落ちてくる。怪物と戦うのは空を駆ける3人の魔女(エトワール)。幼女の神様から人生リベンジ能力で死んでは生き返り,その少し前からもう一度。果たして幸福な結末を導くことはできるのか―という感じです。



 津路参汰先生の絵にOP曲の「[a]slow star」などポップでかわいらしい雰囲気。しょうもないギャグには笑えるし,先の読めない展開の中で世界の謎に迫りながら,時に切なくなったり熱くなったり。なかなかボリュームのある作品なので,じっくり作品世界を楽しみたい人におすすめです!

8.好きなレビュー

 ころなさんの雪菜ちゃんのレビューすき。
 画像は確かに楽しいシーンではないんですが,ここで「雪菜ちゃんって本当に素敵な人だな,かっこいい人だな」と一層好きになれる,いやもしかすると初めて好きになれたかなという場面だったかもしれない。雪菜ちゃんが輝いてた場面なので,画像選びにはあまり悪意は感じなかった。

 そっか,幸せだったら「悲痛な叫びが、溢れ出る涙が、」と激情を爆発させる雪菜ちゃんはいなくなっちゃうのか…確かにそれは惜しいかもな…。実際雪菜ちゃんで好きなシーンの多くは雪菜ちゃんが幸せになっていないかもしれない。「天狼の輝きは、夜の闇があるからこそ輝く」,「天狼」ってかっこいいなと調べたらこれはシリウスのことなんですね。太陽を除いて,地球上から見える最も明るい恒星のようだ。太陽にはかなわないんだなあ…。

 初めは我慢していたり,途中で我慢できなくなったりして紆余曲折あるけど,最後の最後には自分で正しいと思っていることができる,そこに自分で戻っていくことができる雪菜ちゃんはかっこよくて素敵な人なんですよね。揺らぎながらも最後には…に魅力を感じるから,雪菜ちゃんが揺らぐような不幸が必要になるのかな。顰に倣うの西施ではないが,しかめた顔の雪菜ちゃんも良いよな…オロオロしている顔も…フヒ。

 『WHITE ALBUM2』は,どこまでも間違った方向に行ったり,それでもう元の場所に戻れなくなるくらいまで壊れちゃっていいんだと思って自ら突き進んで行ったりしても,結局俺たちは誰かの優しさとか正しさに包まれていて,守られていて,そんなことはできっこないんだってところが好き。あれです。同じ丸戸史明先生の『パルフェ』の「お前の周りの世界は…お前が考えるよりも…ちょっとだけ優しいんだよ」をここでも感じられます。『WHITE ALBUM2』はどんな作品ですか?って問われたら,実は皆をいつも守ってくれている,人の正しさとか優しさを描いた作品だって思う。

9.最後に挨拶

 来年の美少女争奪戦は無いとのことでとてもショックですが,昨年一緒に参加しながらフォローできていなかった人を今年きっかけにフォローできたり新しい方と出会えたりして,きっとより一層美少女ゲームは楽しんでいくと思います。だから2年後にはまた帰ってきてほしい。そして自分もその舞台に帰ってきたいです。
 主催,運営の皆様,参加者の皆様ありがとうございました!

2025年5月1日木曜日

るかるーの新曲『self effacement -blue-』の歌詞を味わう。

 4/27のM3でリリースされた,るかるーのCD『ブルーレモネード』。

 1曲目の「self effacement -blue-」を聴いてみたところアウトロに不穏なものを感じた。
 タイトルにある"effacement"には「消去」「消滅」といった意味があるようで,おぉ,歌詞もなかなか味わい深そう…ということで気付いたら歌を聴き込みながら歌詞を読み込み咀嚼していた。

 るかるーに歌詞の掲載許可を頂いたので、自分の歌詞の解釈をなるべく他の読み方を排除しない形で記したい。
 そしてみんな聴いてくれ。

試聴動画


購入はこちら(
BOOTH販売ページ)

self effacement -blue-

作詞:るかるー/作編曲:perbit


 歌詞の語り手のことを「わたし」と表記します。

 それでは以下,自説の開陳。

 実際のところはわからないが,「夢のできごと」とされている。「堕ちていく」の字から、良い状態から悪い状態へと落下や沈下をするイメージが湧く。 望んでか望まずかはわからないが,「わたし」は水の中に落ちているのではないかと思われる。強く嫌がっておらず,沈んでいくことは受け入れているように感じられる。

 韻を踏みながら雨が降っている,もしくは降っていた情景を描いている。「窓の曇りを指でなぞ」るのは楽しいときにもすることではあろうが,ここでは退屈の表現や何かを待っている雰囲気があると見る。

 「溶け切った」という混じりけのなさを強調する表現から,実際はどうであれ空が一色に見えているのだと思われる。雨が降っているのであれば,空の色は灰色なのではないかと思われるが「ブルーレモネード」と表現されており,退屈や鬱々とした気分がそうさせるのか雨水,雨空が「わたし」には全て青色に見えているのか,夢の中であるならば実際に青色なのかもしれない。

 「滲む景色」は涙や「わたし」が沈んでいる水のことと思われる。「わたし」が水に落ちる,沈んでいるのであれば,「君が手を伸ばしていた」は落ちる,沈む「わたし」を助けようとしているのだと思われる。

 そうではなく「わたし」が水に落ちているか,沈んでいるかに関わらない比喩であるとしても,少なくとも「君」が「わたし」のためを思って何かをしてくれたこと,もしくはその思いを感じたことと考えられる。

 落ちていく,沈んでいく中で離れていく「君」の声の残響。「遺る」の字から「君がいなくなっても」ということと思われる。

 「今すぐ会いたい」と直接「君」に言うのであれば,会えるか会えないかはそこで返答があればわかることが多いと考えられる。そのため「今すぐ会いたい」は直接「君」に伝えたのではなく,おまじないや願掛けのような感じでつぶやいてみたのではなかろうかと思う。

 もしくは「「今すぐ会いたい」って言ったら」,これは「わたし」の夢の中だから「もうすぐ会えるかな」ということと考える。つまりその場合は「わたし」の夢の中なので,「わたし」が望めば「君」を呼び出すことができるということではないかと思われる。

 「触れた心に涙がつたう」は「君」と「わたし」のどちらの心か,それとも両方か。心に対して触れたのか,それとも心に何かが触れてきたのか。「涙がつたう」のは心に涙が流れているのか,「心に触れたこと」への反応として涙が流れたということなのか。一つの考えとして「君が手を伸ばしていた」とあるので,それが「わたし」の心に触れ,そのことに対して涙が流れたのではないかと考える。

 「いつのまにか」は「涙がつたう」にのみならず「届かないぬくもり」にもかかっていると思われ,「ぬくもり」は「手を伸ばしていた」「君」であると見ると「わたし」は「君」にもう会うことはできない,もしくは「手を伸ばして」もらうことはできないのだと思われる。

 「ぬくもり」が「わたし」の「涙」もしくはその涙を流させる感情,「君」への思いであると見ると,「君」に会うことができなくなった,もしくは「君」から離れていく「わたし」の涙は「君」へと向かってつたっていくことがないということと思われる。すなわち,会うことができるのであれば涙を流す姿を見せたり,「君」に触れていれば「わたし」の涙が「君」に本当につたうこともあろうかと思われるが,「君」に会うことも触れることもできないいまでは,涙は「君」への方向性なくただその場にこぼれていくということではないかと思われる。

 もし「わたし」が水に落ちて,沈んでいるのだとすれば,こぼれた涙はすぐさま周囲の水に溶けてしまいどこにもつたうことがない。水の中でなければ重力に従い流れた涙は頬に跡を残したり,服や地面に落ちて色を変えたりと周囲に変化を起こす。しかし水の中でいくら涙がこぼれても持っていた「ぬくもり」はたちまち失われ,涙はどこにも誰にも届かず,周囲に変化を起こすこともなく消えていく。

 「醒めない」とあることからこの夢の世界はいつ見ても,いつまで見ていても変わることがなく「ブルー」なのだと思われる。空は青以外の色を見せることもあるが,この夢の世界ではそのときはいつまでも訪れないのだろうか。もしくは「醒めない」というのはどちらかと言えば,この夢の世界に留まり目醒めようとしない「わたし」にかかっているのだろうか。悲しい雰囲気に満ちているのに,なぜか「ただ眺めていた」とこの世界を受け入れている。

 1番は夜に見る夢だったが2番は昼に見る夢になっている。1番では沈むことを受け入れていたのに対して,行動も対照的に水面を目指している。「痛み」は一度は沈むことを受け入れたつもりがいざその時になると襲われた肉体的な苦痛かもしれないし,「君」が手を伸ばしてくれているのに黙って沈んでいくことに心が覚えた痛みかもしれないし,そこで必死に水面を目指してみて初めてありありと現れた息ができないことの痛みかもしれない。
 「漂っている」というのは目元にあふれる涙,もしくは「わたし」が水に沈んでいるのであればその波立っている水面,その向こうに揺れる「君」が見えているのではないかと思われる。「漂う」という表現には力強さや意志の強さが欠けているように思われ,直前で必死に水面を目指す「わたし」とは対照的に躊躇したり,今度は「君」が1番の「わたし」のように積極的な行動をせずに状況を受け入れてしまうように見える。

 何より「君」は滲む景色の「向こう側」にいる。「わたし」は水に溺れて苦しんでいるのに同じ水に飛び込んできてはくれていない。水に溺れているのが比喩であるとしても,「わたし」が生きようともがき始めたのを知ってか知らずか,一緒に同じ苦境で苦しみ支えあってはくれない「君」。「手を伸ばしていた」1番の「君」と対照的な冷たさを覚える。

 「わたし」と「君」は1番と2番で変わらずに同じ人物だとすると,1番で「君」が手を伸ばしてくれていたのに離れることを受け入れてしまったので,「君」は「わたし」に手を伸ばすことを諦めてしまったのかもしれないし,もしかすると今では「わたし」と気持ちや空間の隔たりが生じていて,そもそも「わたし」の状況を知る由もないのかもしれない。
 「届かない声の余白」が「とぎれ 消えた」のは先ほどまで景色を滲ませていた,「わたし」が沈んでいくその水にどちらか,もしくは互いの声が阻まれたということであると見える。「声の余白」を言外に込められた思いと捉えると,直後の「今すぐ会いにきて」の背後にある「君」の思いが「わたし」に「届かない」のであれば気づいてあげられなかったということに思われる。他にはたとえば「君」の外の世界に「届かない」とか,そのため実現に「届かない」などとも読める。

 水を比喩とすると「とぎれ 消えた」のは「わたし」と「君」が空間的に離れてしまったのか,苦しむ「わたし」と向こう側にいる「君」との間に状況や気持ちの隔たりがうまれたのかはわからないが,お互いの言葉や思いが行き交うことができなくなってしまったということではないかと思われる。

 もし1番と2番で「わたし」と「君」が入れ替わっているとすると「声」の主は1番で沈んでいく「わたし」を手を伸ばして助けようとした「君(1番)」である可能性もある。その場合「届かない声の余白」は「わたし(1番)」に呼びかけた言葉に込められた,何か寄り添おうとする気持であるとか,何か生きることの希望であるとかではなかろうか。水は単に苦境の比喩に過ぎないかもしれないが,その言葉や言外の思いが水の音や,ものとしての水に阻まれて「わたし(1番)」に聞こえなかった,もしくは聞こえても心に響かなかったのではないかと見える。そのために君が水に沈んでしまったのであれば命を失ったのかもしれないし,助けてあげられないほどひどい状態になってしまったとか,助けてあげられないほど互いの気持ちや空間の距離が離れてしまったということかもしれない。手遅れになってしまった感じがある。そのことを悔やんで「君の声忘れられない」のだと考える。

 もしくはあくまでやはりこの部分の「声」というのは全て,「今すぐ会いにきて」と言った「君の声」と捉えるのが自然なようにも思われる。その上で1番と2番で「わたし」と「君」が入れ替わっているのであれば,1番の「もうすぐ会えるかな 「今すぐ会いたい」って言ったら」で「わたし(1番)」は「君(1番)」に 「今すぐ会いたい(実際には「今すぐ会いにきて」)」と伝えていたのではないかと考えなおせる。しかし2番の「わたし=「君(1番)」」はそれに返答しなかった,できなかった。もしくは良い返答をしたにせよ,相手の「もうすぐ会えるかな」という期待には応えられなかった,応えなかったのかもしれない。そうしてやはりこちらでも何か手遅れになり,その転換点になった「今すぐ会いにきて」の声が忘れられないのだと考える。

 「夜」は実際に夜のことかもしれないし,「ぬくもり」が何を指すかの捉え方によっては「水」もしくはそれにたとえられた「苦境」かもしれない。「ぬくもり」が「わたし」や「君」の温かな思いや言動のことであるとすると,それが「おきざり」になったのは受け取ることができなかったからだと思われる。

 もしくは「ぬくもり」は直接に,救うことが叶わずに水中や波間に残された「わたし(1番)」のことかもしれない。「遠い」とあることから時間的や空間的,感情的な隔たりがあって,その「ぬくもり」を取り戻すことは難しい,もしくは不可能なのだと思われる。
 「わたし」は「君」の「ぬくもり」を「独り占め」したかったが,できなかったと読める。たとえば先の,「今すぐ会いにきて」と言って「君」が脇目も振らずに来てくれるかどうかで気持ちを確かめたかったが来てはくれなかった,もしくは来てはくれたが「わたし」だけのものではないことがわかってしまったのではないだろうか。

 まずは,「わたし」にとって「わたし」のぬくもりは「君」だけのものであるつもりだけど,残念ながら「君」は「君」のぬくもりを「わたし」だけのものするつもりはないことがわかってしまったのだと考える。「わたし」は「君」との気持ちの温度の違い,「わたし」にとっての「君」は特別だったけど,「君」にとっての「わたし」はそうではなかった。そのことや,それによって独り占めの夢が叶わない。「醒めないブルーの記憶」が水のようにあふれ流れていくのか,もしくは実際に涙があふれ流れているのかもしれない。

 次に,「君」は「君」のぬくもりを「わたし」だけのものにするつもりだった,もしくは「わたし」は「君」のぬくもりを独り占めするつもりだったが,「わたし」だけのものにしてはいけないと「わたし」はわかってしまったのだと考える。そうすると「君」のぬくもりは「わたし」以外にも多くの人を温めていたのかもしれない。「わたし」が使い果たしてよいものではないと身を引いたのかもしれない。
 「しわよった眉間」からいらだちや苦悶が感じられ,「指が撫でる」から慈しみや慰め,もしくは機嫌取りの印象を覚える。他は「ぬくもり」という表記であるのにここでは「温もり」。これまで「ぬくもり」は何度か出てきたが,その際に「わたし」と「君」との手や体が触れたかどうかは言及されておらず,おそらく身体の接触は重視されていない。「ぬくもり」という表現は,直接触れることのできない温かな気持ちや言動により比重が置かれていると考えられる。一方,ここでは実際に触れている「君の指」から伝わってくる体温や熱であることにより比重が置かれているので「温もり」なのだと解釈する。

 気持ちがすれ違ったのか,気持ちの温度が異なることに気づいたのか,とにかく「わたし」と「君」の二人の繋がりはもう手遅れになっている。その現状,事実がある以上,以前交わした懐かしい「君」もしくは互いの温もりも,今では「わたし」または二人の痛みや辛さを大きくするだけに感じられるのだと思われる。もはや水の中で生きる魚(「わたし」)に人(「君」)の体温は熱すぎて,その手で触れられると酷く傷ついてしまうみたいな。
 うん。

 温もりを交わしあうことができた日,そうすることで二人に幸せがあふれた日,それがずっと続くものだと信じられた日。

 なのにどうして…
 「言えたら」とあるが「君」に言えたのか,言えていないのか。「君」に言えたのだとして,それは現実なのかそれとも夢の中だけのことなのか。後の歌詞からすると,現実で「君」に言うことはできなかったと思われる。言えたのだとすると,夢の中で「君」に言うことができて不幸な結末を迎えた現実を夢の中ではやり直すことができたのではないかと思われる。

 そもそもこれまで登場してきた「君」ではなく,その後に「わたし」が幸せな二人になることができた相手かもしれない。どちらにしても「君」との思い出から,今の「わたし」は相手に素直に気持ちを伝えることが大切であると思っているのではないか。
 「わたし」の伝えた気持ちに夢の中の「君」が微笑む。「わたし」がその微笑みに向かって伸ばしたのか,やはり「君」が「わたし」を救おうと伸ばしたのか,その手はまたも届くことはない。またブルーの中へ,抗うことなく「君」から遠ざかっていく「わたし」。空は晴れ,光が差し込み,君は微笑んだ。悲壮感は薄い。本当に満足した,納得することができたから「君」との別れを「静かに」受け入れられる。
 「ブルー」を繰り返し,ここにきて初めての「青」。「青」からは「未熟さ」とか「若さ」「爽やかさ」などを感じる。「青の季節」はたとえば「青春」。沈鬱な雨模様をうっかりブルーレモネードにたとえてしまったのは,「わたし」が実はあの日々に「甘酸っぱさ」も感じていたのでは。

 あの日々を悔やみ,夢の中でやり直す必要はもうない。記憶を作り変える必要はない。そのままの姿で記憶の中に大切に守る。あの日々に本当にあった「君のぬくもり」を忘れてしまうことがないように。

 きっと今でも「君」のことが確かに好きな「わたし」。「恋の音」は「君」のぬくもりに触れて恋に落ちた瞬間の感覚なのだろうか,それとも「君」に恋する中で聞いた「君」の言葉とか,雨や涙の音,もしくは幸せな風景に満ちていた音や声なのか。

「君」と一緒になれることを今でも待っているのか。いや,もしくは思い出の「君」のことを待っているこれまでの夢に別れを告げ,「君」の思い出とともに「君」はいない現実へと帰っていくのか。夢の中の「君」からも「わたし」は離れて,「わたし」は「君」の前から「わたし」を消した(これが「self effacement」?)。わからないが,「君」とのあの日々は青の季節として大切に閉じ込めた。もうブルーな夢が「わたし」を絡めとることはないのではないかと思う。


終わりに

 こういったことは初めてしました。素敵な曲や歌声はもちろん,「これはじっくり読みたい!」と思わせたるかるーの詞のおかげですね。
 2曲目の「ブルーレモネード」も3曲目の「レモン☆ぱちぱち☆せんせーしょん!」も良い感じだから買ってくれ聴いてくれ。前々作の「起こせ!せんせーしょん(リンクはYouTubeの公式音源)」は俺もお気に入りの曲だし,各種音楽サービスで配信されてるからどうですか。

 「ぬくもり」と「温もり」の表記があることに気づいてしまい,そこからあふれる情熱で2日間で書き上げることができました。

 読んでくれてありがとう。

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